オンラインゲームの制作支援と評価
松原 仁 (まつばら ひとし)
公立はこだて未来大学 システム情報科学部 教授
https://www.tachibana-u.ac.jp/brand_engineering/interview03.html
オンラインゲームは今後ますます盛んになっていくことが予想されていますが、制作費の高騰や反社会性の懸念などの問題を抱えています。このままでは日本はオンラインゲームのビジネスから脱落してしまう危険があります。このプロジェクトではオンラインゲームが有用であることを科学的に示すとともに、効率的な制作方法論を確立することを目指します。ソフトウェアやデバイスの工夫により、健全性を保ちつつ面白いオンラインゲームを実現します。
実際には,この成果を学際的研究と(従来のゲーム業界だけでない)多様な業界との連携,具体的には広い意味でのゲームに関係する研究者と業界があるべきゲームの実現に向けてともに頑張る場の提供という形で実現しつつある.
本研究の提案において我々は,TV ゲームの中でも「オンラインゲーム」に焦点を当て,(1)オンラインゲームには社会的に有用な良い面が存在することを示す.また,その有用な良い面を引き出すようなソフトウェア,デバイスのあり方を追求する(オンラインゲームの悪い面と指摘されている現象が減少するあるいはなくなるようなソフトウェア,デバイスを開発する),(2)オンラインゲームの効率的な制作方法論の確立を目指す(オンラインゲームの制作費を下げるための手法を開発する)ことを目標としてきた.そして,研究を推進してきた結果,「人生のさまざまな場面でさまざまな形でゲームに親しむ社会を実現することがQOL (Quality of Life)を向上させる」という考え方に至った.この意味での(広い)ゲームをここでは “Universal Game for Life” と呼ぶことにする.
本研究プロジェクトでは,この “Universal Game for Life” を実現するために,現実世界とゲームの世界との間の適切なインタラクションを実現するという観点からオンラインゲームの問題点を打開することを目標として,次世代のオンラインゲームに資する研究を実施した.
なお,研究期間中にユビキタスなネットワーク環境の進展や,ポータブル・デバイスの普及やウェアラブル・デバイスが登場し,プレイヤが現実世界内存在でありつつ,同時にモバイル環境を媒体として仮想世界との「関わり」を生成し,仮想世界内存在となることが可能となってきた.このような動きは,現実世界とゲームの世界との間の適切なインタラクションを実現するという観点にたつわれわれの方向と符合し,これを支持するものである.
研究当初の段階では,全方向的に技法やツールの作成,教育効果の測定を行なってきたが研究の進捗の結果,オンラインゲームが目指すべき今後の方向として,3 つの要素が重要であることが明らかになった.すなわち,(1)仮想世界は,現実世界から遊離しておらず,ある程度の合一性を有している(「あちら」と「こちら」が分断されていない),(2)他のプレイヤと共同して仮想世界と関わる,あるいは現実世界での協働を行うといった要素を有している(「ひとり」に籠らない),(3)仮想世界との関わりや現実世界での協働関係の構築の際に身体性のあるインタフェースもしくは活動がある(「存在」の実感)である.このうち,(1)は現実世界との関わり,(2)は他のプレイヤとの関わり,(3)は身体性のあるインタラクションによる両者の統合である.
そこでわれわれは,今後のオンラインゲームの方向性を,「インターネットを経由して現実世界および他のプレイヤとのインタラクション(関わり)が生成されるオンラインゲーム」としてとらえ,これへ向けてこれまでの研究成果を(1)インタフェース開発・評価,(2) ビヘイビア形成支援,(3) インタラクション開発・評価の3 つのコアプロエジェクトに集約した.
「(1)インタフェース開発・評価」のコアプロジェクトにおいては,現実世界との関わりの観点からマルチモーダルインタフェース/デバイスの開発・評価・改良の研究を行なった.具体的には,位置計測技術としてモーショントラッキング手法,超音波による位置計測手法(特に移動体に対する実時間での高精度位置および速度推定を可能にする基本アルゴリズム),磁気式レゾルバの仕組みを光で実現した光レゾルバ,また,回転角度を取得するセンサに用いられる絶対角度取得手法を,空間座標をリアルタイムに取得することに応用した投影型空間エンコーダなどを新たに開発した.また,振動触覚と骨伝導による音声情報提示の併用による歩行者ナビゲーションシステムや渦輪衝突による香り場生成と歩行者の軌道予測との非装着検出技術を組み合わせによる歩行者本人だけに香り提示を行うシステムなども新たに開発した.
「(2) ビヘイビア形成支援」においては,他のプレイヤとの関わりの観点から,MMORPG (Multi Modal Online Role Playing Game)の実際のゲームのログを用いた解析とそれに基づく運用支援の研究を行なった.具体的には,オンラインゲーム制作会社に対して,ヒアリングを行ない,解析技術が適用できる問題点の抽出を行なった.行動ログとチャットログの実際のものの提供を受け予備的な解析を実現した.平穏時のデータを元に予備解析を進め,現象のモデル化を行なった.さらに問題のある事案が含まれたデータに対して適用し,モデルの妥当性を検証しつつある.
「(3) インタラクション開発・評価」においては,「現実世界,他者との連帯をもったインタラクション」へ向けた,愛着とその持続を促進するユーザーインターフェース(KUI)の研究を行なった.具体的には,愛着の感じられる人工物の形姿,触感,振る舞いについて,ユーザの直感的な印象を評価し,メカニズムを解明した.
コアプロジェクト以外では,モバイル/ユビキタス機器なども統合的に利用して実世界における複数プレイヤの交流を促進することに重点を置いて,これまでの表現技術の研究成果の完成度を高めるとともに,オンラインゲームの実現例を示すための準備を進めた.逆運動学計算と動力学シミュレーションに基づく動作生成手法を開発するとともに,視覚的・触覚的注意を統合し,感覚運動系のシミュレーションに基づくバーチャルクリーチャの動作生成を実現した.
松原仁
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