ユビキタス・コンテンツ製作支援システムの研究
稲蔭 正彦 (いなかげ まさひこ)
慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科 教授
https://www.kmd.keio.ac.jp/ja/faculty/masa-inakage
本研究では、21世紀の新しいデジタルコンテンツ分野としてユビキタス・コンテンツ提案し、ユビキタス・コンテンツ製作を支援するためのシステムを開発し公開する。また、本研究では良質なコンテンツを創出するためにコンテンツデザイン理論を確立し指針としてまとめる。さらに、コンテンツ製作支援システム及びデザイン理論を活用して良質なユビキタス・コンテンツを製作し、その有用性を実証し普及促進活動を行なう。
ユビキタスコンテンツとは、人とモノと環境のインタラクションによって生活者が生活の中で体験するコンテンツである。生活の身の回りのモノや空間が状況や空気を読み変化する、コンテキストを理解するダイナミックなコンテンツである。このようなダイナミックなコンテンツは、人の生活における経験を蓄積していくことが可能で、コンテンツが体験者の経験値に応じてカスタマイズされる機構を有する。その結果、コンテンツは状況に応じて変化するため、常に新鮮であり、その人に適したコンテンツとして表現される。これまでは、プロダクトデザイン、環境や空間デザインなどのデザイン領域であったモノや空間は、「遊び」の演出が付加されることで、緩やかなストーリーテリングが埋め込まれるので、コンテンツ化するのである。また、人とモノと環境とのインタラクションが複雑化していき、ネットワークとしての相互関係を築いていくと、生活シーンそのものがコンテンツの舞台となりコンテンツとなる。ユビキタスコンテンツとは、まさしく21 世紀の創造社会のライフスタイルデザインであり、心を豊かにするための経験デザインである。
本研究では、ユビキタスコンテンツを実現するために、3軸で研究を実施した。
まず、クリエイターが従来のweb 等の画面をデザインする感覚でユビキタスコンテンツを製作できるツールキットを開発した。xtel と呼ばれるツールキットは、センサやアクチュエータを制御できる通信機能を有する超小型ハードウェアMoxa、Moxa を制御するためのスクリプト言語Talktic、web サービスなどと連動するための環境Entity Collaborator、経験を蓄積し集合知エンジンによりコンテンツ同士が連動する機能を実現するLife で構成される。Xtel は、国内外においてDIY コンピューティングにおけるツールとして認知されるに至った。本研究は、オープンソースとして展開していくことを研究開発開始の段階で決定していたが、Moxa はオープンハードウェアとして認知されている。センサやアクチュエータを制御できる小型ハードウェアは、既存の先行システムが複数存在するが、通信機能を有する点において優位である。Talktic は、web デザイナが活用するActionscript でも採用されているECMA script に準拠しており、クリエイターにも開発が行なえる配慮をした。また、開発環境においてもEclipse 環境及びweb ブラウザ環境でも開発を行なえる環境を開発した。
2 つ目の研究軸は、ユビキタスコンテンツを制作するためのデザイン理論の構築である。本研究では、現象学的手法に基づきアイデア発想からプロトタイプまでをティンカリングするデザインプロセスを提案した。また、アイデア発想においては身体的動作やネットワークなどで連携される関係性のデザイン法を提案した。Experience Chain という経験の連鎖理論は、従来のコンテンツとは一線を画する理論であり、本理論をxtel のLife モジュールとしてツール実装を行なった。本デザイン理論は書籍化されたが、海外において中国語に翻訳されている。
3 つ目の研究軸は、生活の中に溶け込む多様なユビキタスコンテンツを制作するとともに、デザイン理論を用いて短期間にコンテンツを設計しxtel を用いて実装した。良質なコンテンツであることを実証するため、多数のデザイン・コンテンツの国際コンペやフェスティバルにて展示するとともに、賞を受賞した。特に、衣食住に着目をし、さらに遊びの要素を展開することで、傘や照明をはじめとする日用品や生活環境にアニメーションのごとく命が吹き込まれ、遊び心のある心を豊かにする生活環境に寄与する作品を発表した。
本研究では、ユビキタスコンテンツの概念を国内外で提唱し啓蒙していくアウトリーチ活動も実施した。その結果、国内外においてユビキタスコンテンツの概念が認知され、特に海外ではxtel の利用、デザイン理論に基づくワークショップ、制作した作品の展示への関心が数多く寄せられている。総合実証実験として、09年9 月に「ユビキタスコンテンツ・ショーケース2009 – 生活に溶けこむコンテンツデザイン展 -」を一軒家において開催した。通常の美術館やギャラリー空間とは異なり、作品が生活空間に溶け込むことで、生活空間が豊かになることを示し、従来のメディア芸術とは異なる新規コンテンツ分野としてのユビキタスコンテンツの概念の有用性を実証した。
稲蔭 正彦
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科
奥出 直人
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科
岩竹 徹
慶應義塾大学 環境情報学部
加藤 文俊
慶應義塾大学 環境情報学部
小檜山 賢二
慶應義塾大学
田中 浩也
慶應義塾大学 環境情報学部
中西 泰人
慶應義塾大学 環境情報学部
藤田 修平
慶應義塾大学 環境情報学部
脇田 玲
慶應義塾大学 環境情報学部
- CRESTユビキタスコンテンツシンポジウム
2006年2月6日
六本木ヒルズ
- CREST ユビキタスコンテンツシンポジウム2007
2007年2月16日
東京フォーラム、B5ホール
http://kmd.sfc.keio.ac.jp/crest07.html
- ユビキタスコンテンツプラットフォームXtel-ワークショップ
2007年9月13日
慶應義塾大学 三田キャンパス東館 6階「G-SECLab」
http://iki.sfc.keio.ac.jp/xtel/work07s.html
- ユビキタスコンテンツシンポジウム2008
Media Design Tours
2008年2月8日(シンポジウム)、9日(Media Design Tours)
丸の内 三菱コンファレンススクエア M+
http://xtel.sfc.keio.ac.jp/jp/2007/12/2008.html
- ユビキタスコンテンツショーケース2009
2009年9月15日〜17日
JASMAC八雲
- ユビキタスコンテンツシンポジウム2009
-And then there are there-
2009年2月26-27日
代官山ヒルサイドプラザ
http://xtel.sfc.keio.ac.jp/jp/2009/01/_2009.html
- ユビキタスコンテンツショーケース2009
-生活にとけこむコンテンツデザイン展-
2009年9月15-17日
JASMAC 八雲
http://xtel.sfc.keio.ac.jp/jp/2009/07/2009.html
- ユビキタスコンテンツシンポジウム2010
-デザインとエンジニアリングの境界線-
2010年2月16日
慶応大学日吉iキャンパス
http://xtel.sfc.keio.ac.jp/jp/2010/01/_2010.html
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 稲蔭教授室
Tel 045-564-2483/Fax 045-564-2540
メールでのお問い合わせは、以下のフォームよりお送りください:
https://wwwdc01.adst.keio.ac.jp/kj/kmd/contact.html