デバイスアートにおける表現系科学技術の創成

岩田 洋夫 (いわた ひろお)

筑波大学 大学院システム情報工学研究科 教授
http://www.deviceart.org/



デバイスアートとは、機械技術とデジタル技術を駆使し、テクノロジーを見える形でアートにしていくインタラクティブ作品であります。このプロジェクトでは、工学者が新技術を自ら作品にする過程を通じてデバイスアートにおける技術体系を明らかにし、制作と評価の方法論を構築します。それを行うためにガジェットリウムという新しい研究展示施設を作ります。ここでは、作品の特許化、製品化をも行い、製造業の活性化に貢献することを目指します。

研究実施の概要

「デバイスアート」とは、近年の日本のインタラクティブアートの世界的興隆を背景として導き出された新しい概念で、メカトロ技術や素材技術を駆使し、テクノロジの本質を見せる芸術様式のことを指す。この概念は、従来の芸術のパラダイムにはない、テクノロジとアートとデザインの新たな融合をもたらすものである。 デバイスアートという名前と概念は、2004年にこのプロジェクトの立案を行った時に生まれたもので、日本発の新しい芸術様式である。
デバイスアートには以下の3つの特徴がある。
(1)デバイス自体が作品の表現内容になる。ツールとコンテンツが一体化している。
(2)作品がプレイフルで、積極的に商品化され日常生活に取り入れられる。
(3)道具への美意識といった、日本古来の文化との関連性がある。
これらの特徴は、いずれも、従来の西欧芸術にはなかったもので、世界的に注目されるようになっている。日本の文化的伝統と先端技術が融合したデジタル工芸ともいえる。

本プロジェクトでは、デバイスアートにおける技術の体系化と、制作と評価の方法論の構築を目的とし、以下の3つの研究項目を設定した。

研究項目1:先端的インタラクティブガジェットの開発によるデバイスアートの高度化
研究項目2:デバイスアートにおける機能モジュールの開発による、生産性の向上
研究項目3:デバイスアートの客観的評価手法と、制作のための方法論の構築

本プロジェクトでは、工学と芸術にまたがる素養をもつ研究者でチームを編成しており、各研究項目は工学者とアーティストが共同して担当している。この研究チームには、我が国を代表するメディアアーティストが多数参加しており、研究代表者のリーダーシップの元に、一元的に管理されている。

上記の目標を実現するために、研究室と展示室とベンチャービジネスを一体化させたフレームワークである「ガジェットリウム」構想と名付けたフレームワークを提案した。デバイスアートの研究スタイルは、展示を通じて研究開発を推進することを最大の特徴としており、展示は成果報告ではなく、研究のプロセスである。それを実践する場として、日本科学未来館3階「メディアラボ」にデバイスアートの常設スペースを開設した。ここでは、多様なメディアアート展示を可能にする柔軟な展示設備を導入し、4ヵ月毎に展示替えを行い、プロジェクトメンバーが個展形式で展示を行ってきた。

この展示を通じて、インタラクティブ技術を、作者が作品についていない状況でも成立する常設展示を行うための要件が明確化された。さらに、公共の科学館で実施可能な評価手法も明らかになった。1週間程度の学会等であれば、研究者自身が作品の説明を行い、評価データを取ることが可能であるが、常設展示ではそれができないので、バリアが非常に高い。本プロジェクトでは、この課題に対するブレークスルーを行った。

また、本プロジェクトではデバイスアートの理論面での研究を進めるために、13回にわたって国内外でシンポジウムを開催した。その記録をweb 上で整理し、デバイスアートのコンセプトを集約した。さらに、展示作品の思想を作家自らが語り、その映像を論文のように参照可能な形態で記録した「デバイスアート・アーカイブ」を構築した。これらを統合したポータルページを構築し、後世の人が分析することを可能にした。これによって、アートにおける「知の積み上げ」が可能になると考えられる。

上記の活動を通じて、デバイスアートを日本発の新しい芸術様式として、世界的に認知されるに至った。

チーム構成

岩田洋夫

筑波大学システム情報工学研究科 教授

稲見昌彦

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授

児玉幸子

電気通信大学人間コミュニケーション学科 准教授

土佐信道

明和電機

八谷和彦

ペットワークス

クワクボリョウタ

アーティスト

矢野博明

筑波大学システム情報工学研究科 准教授

草原真知子

早稲田大学 文学学術院 教授

チームシンポジウム一覧

  1. デバイスアートシンポジウム
    – テクノガジェットはアートになるか?
  2. 2006年3月2日
    東京都写真美術館

  3. デバイスアートシンポジウム
    – テクノガジェットはアートになり得るか?
  4. 2006年5月7日
    日本科学未来館

  5. デバイスアートシンポジウム
    – 「デバイス」「アート」「コンセプト」の関係を考える
  6. 2006年6月21日
    秋葉原UDX

  7. デバイスアート展/シンポジウム
    – メディアアートを商品にするとは
  8. 2007年9月26日〜30日
    日本科学未来館

  9. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ
    第1期展覧会「表現する研究者たち」
  10. 2008年4月24日〜8月31日
    日本科学未来館3階常設展示室

  11. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ
    第2期展覧会「魔法かもしれない。」
  12. 2008年9月6日〜2009年1月6日
    日本科学未来館3階常設展示室

  13. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ
    第3期展覧会「博士の異常な創作」
  14. 2009年1月21日〜2009年5月11日
    日本科学未来館3階常設展示室

  15. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ
    第4期展覧会「微笑みトランジスタ」
  16. 2009年5月20日〜9月28日
    日本科学未来館3階常設展示室

  17. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ
    第5期展覧会「感覚回路採集図鑑」
  18. 2009年10月7日〜2010年2月8日
    日本科学未来館3階常設展示室

  19. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ
    第6期展覧会「ジキルとハイドのインターフェース」
  20. 2010年3月17日〜6月14日
    日本科学未来館3階常設展示室

  21. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ
    第7期展覧会「ノック!ミュージック」
  22. 2010年6月30日〜10月11日
    日本科学未来館3階常設展示室

  23. デバイスアート・ギャラリー@メディアラボ 
    第8期展覧会「見えない庭」
  24. 2010年12月1日〜2011年3月21日
    日本科学未来館 3階 常設展示室

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研究終了報告(公開分) 2.3MB プレビュー ダウンロード

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